INVICTA 8926 2013/9/9
 
1.はじめに

腕時計が壊れた。

もう28年前になるのか、亡くなった父に就職祝いに買ってもらった SEIKO Chronos のクオーツで、人が選んだ物に必ず「そんなものはあかん、こっちにせぇ」といちゃもんを付けていた父が、一言の文句もつけずに「それか」と言って買ってくれたほぼ唯一のものだ。

シンプルなデザインで、ビジネスやフォーマルに使い勝手の良い時計だったので愛用していたのだが、ある日時間を合わせようと思って竜頭を引っ張った所、ポロリと抜けてしまった。

今となっては死んだ父の形見の様な物でもあるし、可能ならば修理に出してこの先も使いたいと思って駅前の古〜い店構えの時計屋に持って行ったら、これまた時計屋の主人、最近はめったに時計の修理なんか無いんだろうなぁ、古い時計だけど問屋まで行って部品探してでも必ず直すとえらい意気込み(笑)。

と言う訳で、時計屋さんに預けて修理が終わるまで、しばらくの間腕時計無しの生活だったんだけど、その間、出張が続き、おまけに毎日の様に雨。

携帯電話もあるし、腕時計なんか無くても構わないだろうと思っていたんだけど、鞄と傘を持った手で苦労しながら携帯を取り出して時間を確認するシチュエーションが何度か続いた後、これはとてもじゃないけどやってられないと感じ、新しい腕時計が一つ欲しくなってしまった。

 
2.探す

どうせ買うなら以前から欲しかった自動巻のダイバーズウォッチが欲しい。

理想はオメガのシーマスターかセイコーのダイバーズだが、そんな30万も40万もする様な時計がおいそれと買える訳は無く、セイコーの普及モデルでも自動巻だと5万前後もするし。

まぁ、この際それにしようかとも思いながらネットで探していたら、セイコーのでも海外モデルとか、色々見つかった。

その中でも SEIKO の SKX007 に心を引かれていたんだけど、文字盤が 41mm でちょっと大きい感じ。

ボーイサイズの SKX013 なら 36mm と小柄でいいかなぁとか思っていたら、実はこの2つのモデルのムーブメントには秒針停止機能と手巻き機能が付いていない。

機械式時計にそこまでこだわる事は無いかと思いながらもやっぱり微妙に引っかかりを感じ、他のを探しているうちに見つけたのが、 INVICTA のプロダイバ 8926 というモデル。

デザインは基本の基本と言われるらしいロレックスのサブマリーナを踏襲した(別の言い方をすると、コピーした)もので、最初は線が細くて古めかしいかなぁと思っていたものの、しばらくすると逆にこれがシンプルで良く、 SEIKO のがごてごてしている様に感じてきてしまった。

INVICTA という会社は元々スイスの時計メーカーで、普及価格のものを中心に作っていたらしい。それがアメリカ人に買収されて、現在はハリウッドでデザインに凝ったリーズナブルな時計を作っているんだとか。
と言っても質が悪い訳じゃなく、ダイバーズウォッチはロシア海軍で正式採用されているぐらいに高い品質を誇っているんだと。

それはさておいて、この 8926 はムーブメントに MIYOTA(シチズン)の 8215 という、高級ではないけど、評判の高い汎用の自動巻ムーブメントを使っていて、秒針停止機能も手巻き機能も付いているとの事だ。

竜頭が斜め下についている SEIKO のデザインも好きだけど、このシンプルな顔と、安いくせに秒針停止まで付いている事に引かれて、INVICTA 8926 を買う事に決めた。

 
3.買いました
INVICTA 8926

と言う訳で、木曜日に Amazon さんに注文して、土曜日に到着。

並行輸入業者もあったんだけど、Amazon が INVICTA の正規輸入業者になってるし、値段も変わらないので Amazon で購入。

届いた外箱は INVICTA のマークが浮き彫りになっているだけのあっさりしたもの。

まあ、安い時計だし、こんなものか。

INVICTA 8926

と思ったら、その中から紙で包まれた本当の外箱が現れた。

で、紙箱は外箱が取り出しやすい様にフロントオープンになってる。

結構なおもてなし感でドキドキ(笑)

INVICTA 8926

時計の上にはきちんと布が掛けられている。

蓋の部分に差し込まれているのが取扱説明書。

INVICTA 8926

本体登場。

文字盤にもベルトにも、きれいに保護シールが貼ってある。

INVICTA 8926

値段が値段だから、もっと粗い、安っぽい作りとか仕上げかなぁと思ってたんだけど、何の何の、本体の仕上げはきれいだし、文字盤の蓄光塗料の盛り上がり方もきっちりしているしで、外国製とは思えない美しい仕上がり。

INVICTA 8926

また、この時計は背面がガラスになっていて、中のムーブメントが見える様になっている。

機能的な意味は無いし、スケルトンを売りにしている時計の様に中の歯車をデザインにしている訳でもないけど、こういった機械が見えるという事自体が男の子心をくすぐるなぁ(笑)。

INVICTA 8926

ムーブメントは MIYOTA の8215 だと思っていたら、ローターを見ると、これには SII(セイコー)の NH35A というムーブメントが使われていた。

調べてみたらどちらも大して変わらず、MIYOTA が振動数 21,600回/時、日差 -20〜+40 秒で、42時間駆動の 21 石のムーブメント。
SII が振動数 21,600回/時、日差 -25〜+35 秒で、41時間駆動の 24 石のムーブメントだ。

どちらも手巻き機能と秒針ストップ機能が付いている、汎用のモジュール。

 
4.使ってみた

何はともあれベルトの調整。

一緒に買ったのがこの工具セットなんだけど、Amazon のレビュー通り、錆びてるし汚れているし、本当に使うのが心配になってくるレベルの代物。

取り敢えず右上の工具でベルトのピンを抜くんだけど、押しピンがぶれてガタガタ。おまけに焼きがちゃんと入ってなくって、ちょっとずれると押しピンが曲がっていく。

いやまぁ、形と数を揃えただけという酷い工具だわ(笑)

INVICTA 8926

それでもまぁ、だましだまし使いながらピンを抜いてベルトの調整完了。

で、ここで唯一になるかな、この時計の難点が見つかった。

見かけに比べてベルトやバックルの作りがいい加減で、切ったコマを上手く合わせないとはまらないし、バックルは薄っぺらでギシギシして、パチンと気持ちよくはまらない。

でもまぁ、ダメダメだという事は無いし、値段からしてこんなものかなぁ。

 
5.雑感

しばらく使ってみた結果、精度は日差+8秒という所。機械式時計としては平均的な所だとおもう。

クオーツのクロノスに比べるとやっぱり重さを感じるけど、不快な重さではない。厚みもそれなりにあって、カッターシャツの袖口を留めるとちょっと引っかかるかな。

しかし、久しぶりに機械式の時計をはめると、1秒ごとにステッピングモータで秒針の動くクオーツとは違う、テンプと連動した、連続した細かい秒針の進み方がとても新鮮。
そういえば、大昔に持っていた手巻き式の時計もこんな感じだったかなぁと懐かしく思い出したりして。

時々時間合わせをしてやらないといけないし、土日に放ったらかしにしておくと月曜日にはゼンマイ切れで止まっていたり、小の月は自分でカレンダーを進めないといけないと言った不便さはあるけれど、逆にゼンマイさえ巻いてやればいつまででも動き続けるし、この象が踏んでも壊れない様な頑丈さは好きだなぁ。